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2016/11/30

韓国最新政治事情‐韓国検察「崔順実ゲート」関連事件における朴槿恵被疑者としての立件開始から、朴槿恵大統領職早期委譲示唆表明に至るまでの経緯を整理!

こんばんは、韓国政治の混乱を憂うタケオです。
前回の韓国最新政治事情において、韓国の朴槿恵(박근혜、パク・クネ)大統領が「崔順実ゲート(최순실 게이트)」関連疑惑でこれまでにない危機に陥っているとお伝えしましたが、2016年11月29日に朴大統領は、「大統領職任期短縮を含めた進退問題を国会の決定に委ねる」と述べ、大統領職早期委譲を示唆しました。
今回は11月20日の韓国検察朴大統領容疑者としての立件を目的の捜査開始表明から11月29日までの経緯を整理してみたいと思います。


目次
1. 韓国検察、朴槿恵大統領被疑者としての立件を視野に捜査開始
2. 朴槿恵大統領 検察の捜査容認撤回
3. 韓国野党 弾劾訴追案作成準備に入る
4. 「非朴系」議員40人程 弾劾訴追案に賛成?
5. 朴槿恵大統領退陣要求大規模集会に150万人?
6. 「親朴系」議員から「名誉ある退陣」提起
7. 朴槿恵大統領 対国民談話で「進退問題を国会に一任」
8. 終わりに‐韓国政治制度の現状に対する議論も必要


韓国検察、朴槿恵大統領被疑者としての立件を視野に捜査開始



韓国検察は11月20日、「(崔順実氏・安鐘範(안종범、アン・ジョンボム)元青瓦台政策調整主席秘書官他との)共謀関係が認められる部分に関して正式に被疑者として立件した。これからは被疑者とみなしての捜査を進める」と発表しました。


一方で検察は「憲法84条に規定されている韓国現職大統領の刑事不訴追特権により、現職大統領を逮捕・起訴することはできない」と判断し、「被疑者としての立件」となりました。


※参考リンク
ソウル新聞2016年11月20日配信「検察「朴槿恵大統領被疑者立件 賄賂容疑も追加で捜査」(검찰 “박근혜 대통령 피의자 입건…뇌물 혐의 추가로 수사”)」
韓国経済新聞2016年11月20日配信「検察「朴大統領 崔順実等と相当部分共謀 起訴は不可」(檢 "朴대통령, 최순실 등과 상당부분 공모…기소는 불가")」



朴槿恵大統領 検察の捜査容認撤回



検察の朴槿恵大統領被疑者としての立件発表を受け、朴大統領の弁護人ユ・ヨンハ(유영하)氏は、「財団法人ミル(재단법인미르)とKスポーツ財団(K스포츠재단)は「文化育成」と「韓流拡散」という政策目標のための事業であり、崔順実氏の横領は大統領とは無関係」とし、「共謀者とされたことは認められない」とし、朴大統領は、11月4日の「対国民談話」で表明していた検察の自身への捜査容認を撤回し、検察の捜査を拒否しました。


参考リンク
SBS2016年11月20日配信「朴大統領 検察捜査拒否 特別検察には積極的に協力(박 대통령, 검찰 수사 거부…"특검 적극 협조")」



韓国野党 弾劾訴追案作成準備に入る



韓国検察の発表と朴槿恵大統領の検察捜査拒否を見て、野党の共に民主党(더불어민주당)・国民の党(국민의당)・正義党(정의당)の院内代表(日本の国会対策委員長に相当)が11月24日に合同会議を行い、朴大統領に対する弾劾訴追案の作成準備に入ることで合意しました。


早ければ12月2日、遅くとも定期国会(日本での通常国会に相当)最終日の12月9日には採決される、というスケジュールとなりました。


※参考リンク
KBS2016年11月24日配信「野党3党 「弾劾訴追案定期国会内に提出・採決」(야3당 “탄핵소추안 마련 정기국회 내 제출 처리”)」


「非朴系」議員40人程 弾劾訴追案に賛成?



野党が共同で朴槿恵大統領に対する弾劾訴追案作成の準備に入った同日、与党セヌリ党(새누리당、セヌリダン)の中で、金武星(김무성、キム・ムソン)前代表を中心とする朴大統領と距離を置く「非朴系(비박계)」議員の大部分が、弾劾訴追案に賛成する方向だと韓国マスコミが報じました。
一部「非朴系」議員からは、賛成する議員の数が40人に上るだろう、との見方も出ました。


弾劾訴追案の発議には国会議員数3分の2以上の賛成、つまり200人以上の議員が賛成に回らなければならず、野党3党と無所属議員が現在172議席である中で、与党からは少なくとも28人の賛成が必要になります。
そうした中で、弾劾訴追案に賛成する議員が40人ともなれば、28人を大幅に上回る与党議員が造反する形になります。


※参考リンク
京郷新聞2016年11月24日配信「【弾劾案発議秒読み】野党3党 40人余りに上った「セヌリ賛成派」と共同発議推進([탄핵안 발의 ‘초읽기’]야 3당, 40여명으로 늘어난 ‘새누리 찬성파’와 공동발의 추진)」


朴槿恵大統領退陣要求大規模集会に150万人?



「崔順実ゲート」の余波が収まらない中、11月19日・11月26日にはそれぞれ4・5回目の朴槿恵大統領退陣要求大規模集会がソウル特別市(서울특별시)光化門広場一帯(광화문광장)で行われ、特に11月26日行われた集会では、主催者側発表で150万人(警察側発表は27万人)が集まり、「朴槿恵は退陣しろ(박근혜는 퇴진하라)」のシュプレヒコールをあげました。


11月26日での集会では、警察が青瓦台(청와대、日本の首相官邸に相当)から200mまでの人の立ち入りを許可したため、朴大統領にもシュプレヒコールが耳に入らざるを得ない状況でした。


※参考リンク
朝鮮日報2016年11月26日配信「歴代最大規模の集会 衝突なく終わる 主催側150万人 警察側27万人([5차 촛불집회]역대 최대규모 촛불집회 충돌없이 마무리…주최측 "150만명" 경찰 "27만명")」



「親朴系」議員から「名誉ある退陣」提起



セヌリ党「非朴系」議員から弾劾訴追案賛成の意思が出て、与党内の分裂が深まろうとする中の11月28日、朴槿恵大統領に近い「親朴系(친박계)」ベテラン議員から、朴大統領に残りの任期まで務めるより自ら退く「名誉ある退陣」を要求する声が上がりました。


提起した議員の一人は韓国マスコミのインタビューで次のように述べています。


탄핵으로 갈 수밖에 없는 상황인데, 탄핵이 되면 새누리당도 어려워지고 사회가 혼란스러워진다.
헌법재판소 결정이 어떻게 날지 모르지만, 대통령이 직무정지 상태로 계속 가는 건 명예스럽지 못하다, 탄핵으로 가지 않기 위한 방법은 대통령이 스스로 일찍 물러나는 수밖에 없다
弾劾が避けられないだが、弾劾になればセヌリ党も厳しくなり、社会が益々混乱する。
憲法裁判所の決定がどのように下されるかわからないが、大統領が職務停止状態に陥ることは名誉あることではなく、弾劾にならない方法は大統領が自ら早く退く他ない。



※参考リンク
ハンギョレ新聞2016年11月28日配信「親朴重鎮たち 「このままでは弾劾 朴大統領は名誉ある退陣を」(친박 중진들 “이대론 탄핵…박대통령 명예퇴진해야” )」


朴槿恵大統領 対国民談話で「進退問題を国会に一任」



「親朴系」議員の一部から「名誉ある退陣」が飛び出した翌日の11月29日、朴槿恵大統領は対国民談話を開き、「大統領職の任期短縮を含めた進退問題を、国会の決定に一任する。与野党が議論し、国政の空白を最小限にするような、安定した政権移譲の方法が提示されれば、その日程と憲法で定められた日程に従い、大統領職から退く」と述べました。


しかし、自ら退陣を表明するとか、弾劾訴追案の結果を厳粛に受け止めるとか等の明言はなく、与野党間やセヌリ党内の分裂様相を見て少しでも自身への被害を最小限に食い止められるよう、自ら拙速しての判断を避けたのではないか、と僕は見ています。


※参考リンク
JTBC2016年11月29日配信「【3回目対国民談話映像】朴大統領「任期短縮等の進退問題 国会に一任」([3차 대국민담화 풀영상] 박 대통령 "임기 단축 등 퇴진 문제 국회에 맡길 것")」


終わりに‐韓国政治制度の現状に対する議論も必要



朴槿恵大統領は11月4日の対国民談話で検察の捜査に協力するとしながら後に拒否、そして今回の「進退問題国会に一任」表明。
与党セヌリ党は、「非朴系」議員が弾劾訴追案へ賛成に回ると示唆したかと思えば、「親朴系」議員からは「名誉ある退陣」の提起。
野党は、11月12日の朴大統領退陣要求大規模集会に党代表などが参加していながら、状況を鑑みてではあるものの弾劾訴追への道を選ぶなど、「崔順実ゲート」疑惑拡大から広がった朴大統領進退問題の行く末は、既にある意味政治ゲームの様相を呈しているように見えます。


その一方で、僕は、今回朴大統領をこのような行為に走らせた原因が何なのか、今後どういう風に政治制度があるべきなのか、等の議論がなされなければ、また今回と同じような事態が起こり得る、と考えているのですが、そういった議論が深まっているような様子がなく、とても残念に思います。


朴大統領の早期退陣となるのか、弾劾訴追案の行方は、そして韓国の政治体制についての議論が深まるのか、注目です。


現代韓国や朴槿恵氏については、こちらの書籍もご参考に!

2016/11/29

世界新聞(株)寄稿第4弾は、ハンガリーとスロバキアのドナウ川国境にかかるマリア・ヴァレーリア橋(Maria Valeria Bridge)!

おはようございます、海外旅行好きのタケオです!


世界新聞(株)への4回目寄稿記事が掲載!



世界新聞(株)への記事寄稿・掲載について、2016年11月27日に第4弾が掲載されました!


記事内容は、ハンガリーとスロバキアのドナウ川国境にかかるマリア・ヴァレーリア橋(Maria Valeria Bridge)の紹介です!
鉄道でスロバキアのŠtúrovoへ、マリア・ヴァレリア橋を渡ってハンガリーのエステルゴムへハンガリーの旅(ブダペスト・エステルゴム) Part7‐エステルゴム大聖堂を訪ねる、バス・地下鉄を乗り継いでブダペストに戻るを再編集し、寄稿したものです。


下記リンクから是非ご覧ください!


ヨーロッパの国境なんてこんなもん。マリアヴァレリア橋を渡って国境越えしてみた!


マリア・ヴァレーリア橋のハンガリー側入口


マリア・ヴァレーリア橋で、EU旗とスロバキア国旗を見ながら、国境越え!


マリア・ヴァレーリア橋で、スロバキア共和国(Slovenská Republika)とハンガリー(Magyarország)の国境に立ちました!


マリア・ヴァレーリア橋で、EU旗とハンガリー側国旗を見ながら、ハンガリーに別れの挨拶!


マリア・ヴァレーリア橋から望むドナウ川とエステルゴム大聖堂の景色は素晴らしいの一言!

※世界新聞運営者の書籍はコチラ!



引き続き、本ブログと世界新聞での記事を楽しみにして下さい!


ハンガリー・スロバキア旅行に関することは、コチラの書籍もどうぞ!

2016/11/18

「崔順実ゲート」疑惑波及拡大の契機となる報道を行ったJTBCとは、そして孫石熙(ソン・ソッキ)JTBC報道担当社長はどんな人物?

こんばんは、最近再び連日韓国のニュースを視聴しているタケオです。
韓国最新政治事情‐JTBCによる「崔順実ゲート」疑惑拡大から、朴槿恵大統領退陣要求26万人大規模集会に至るまでの経緯を整理!にて韓国テレビ局JTBC発ニュースが「崔順実ゲート」疑惑波及の拡大の契機となったと書きました。


JTBCは従来の地上波3社のKBS(한국방송공사、韓国放送公社)・MBC(문화방송、文化放送)・SBSではないテレビ局のため、韓国のことに詳しくない方にとっては馴染みのないテレビ局かと思います。
そこで、今回はJTBC、そしてJTBC専属ニュースキャスターとして抜群の存在感を誇る孫石熙(손석희、ソン・ソッキ)報道担当社長について書こうと思います。


目次
1. 「崔順実ゲート」疑惑拡大の背景にJTBCの存在?
2. JTBCとはどんなテレビ局?
3. 孫石熙JTBC報道担当社長はどんな人物?
4. JTBC「ニュースルーム」でのスクープ報道で、朴槿恵大統領不支持層の怒り爆発?
5. 孫石熙JTBC報道担当社長が局員に向けて送ったメッセージ「謙遜して自重しよう」
6. 終わりに‐韓国のニュースは、JTBCもチェックの必要有り!?


「崔順実ゲート」疑惑拡大の背景にJTBCの存在?



今回JTBCについて書こうと思ったのは、朴槿恵大統領が就任以来最大の危機に陥るきっかけとなった「崔順実ゲート」疑惑拡大の背景に、朴大統領演説文の崔氏への漏洩に関するスクープ報道を行ったJTBCというテレビ局の存在が大きいと考えているからです。


僕は「崔順実ゲート」に関して、正直のところ最初はここまで疑惑が波及して朴槿恵大統領の退陣危機に至るまでには思っていませんでした。
これまでは、大統領在任中に疑惑が報道されたとしても、大規模な退陣要求までには至らず、大統領の任期が終わったあとに捜査が本格化し、関係者が逮捕される、という流れだったからです。


李明博前大統領も、現在の朴大統領と同様若者層を中心に不人気で、自身と関係者の汚職疑惑は出たことはありますが、今回のような大規模な退陣要求は起こりませんでした。


李大統領政権時と朴大統領政権時で何が異なっているかというのは、政治・経済をはじめ様々な分野であるのですが、その中の一つとして挙げられるのが、李明博氏が大統領の任期を終える直前に開局し、地上波3社(KBS・MBC・SBS)と肩を並べるところにまで来ているJTBCの存在なんです。


JTBCとはどんなテレビ局?



JTBCは全国紙の一つである中央日報(중앙일보、チュンアンイルボ)を発行している中央メディアネットワークが所有する総合編成チャンネル(新聞社所有のテレビ局)の一つで、李明博(이명박、イ・ミョンバク)大統領政権末期の2011年12月に開局しました。


尚、他の総合編成チャンネルとしては、朝鮮日報(조선일보、チョソンイルボ)傘下のTV朝鮮(TV조선)・東亜日報(동아일보、トンアイルボ)傘下のチャンネルA(채널A)があります。


JTBCはニュース番組・バラエティー番組・ドラマの制作を行っている他、サッカー韓国代表戦の中継も行うことがあります。
ちなみに、2016年11月15日にソウルワールドカップ競技場(서울월드컵경기장)で行われた韓国×ウズベキスタン戦の中継はJTBCが行っていました。


※参考リンク
韓国大手新聞社の放送事業本格参入から1年―「総合編成チャンネル」はいま―


孫石熙JTBC報道担当社長はどんな人物?



「崔順実ゲート」疑惑拡大の背景にJTBCがあると書きましたが、更にもう一つ、今回の疑惑拡大の背景として欠かせない人物が存在します。
その人物とは、JTBCで報道担当社長を務める孫石熙氏です。


孫石熙氏は1956年にソウルで生まれ、1984年に地上波放送局の一つMBCに入社、長年MBCのニュースキャスターを務めていたということです。
2003年にMBCを退社した後も、誠信女子大学校(성신여자대학교)の教授として教鞭をふるう傍ら、MBCラジオ番組の司会進行をしていたということです。


そんなMBCの看板キャスターだったという孫石熙氏を、JTBCが報道担当社長という破格の待遇で迎え入れたのは2013年。
以降孫石熙氏はJTBCが伝えるニュースの全責任を負う立場であるだけでなく、JTBC夜のニュース番組「ニュースルーム(뉴스룸)」の月曜日~木曜日の司会も担当する等、JTBCに欠かせない存在となっています。


孫石熙JTBC報道担当社長


特に「ニュースルーム」の一コーナーで、孫石熙氏が最近若しくはその日話題となったニュースを基にして2~3分程意見を述べる「アンカーブリーフィング(엥커부리핑)」は、孫石熙氏の豊富な知識とキャスター経験が活かされたコーナーと言えます。


2016年10月25日放送JTBC「ニュースルーム」での「アンカーブリーフィング」の中で、村上春樹著「ノルウェイの森」を取り上げる孫石熙JTBC報道担当社長


孫石熙氏のジャーナリズム論は、2013年10月29日韓国アナウンサー連合会配信「本当に留まるところを知らない、孫石熙JTBC報道兼時事教養担当社長(거침없는, 참 거침없는 손석희 jtbc 보도 및 시사교양 담당 사장)」の中で、MBCアナウンサーからのインタビューを受けた中でも垣間見ることができます。


우리가 상식으로서 얼마든지 판단할 수 있는 것, 일부 사람들이 판단할 수 있는 문제가 아니라 모든 사람들이 공유할 수 있을 만한 것이 뉴스로서 가치가 있다는 것이죠.
저널리즘은 매일매일 기록해나가는 것인데, 뉴스가치의 우선순위를 정한다는 것은 무엇을 어떻게 기록하느냐의 문제가 아닐까 싶고요, 합리적이고 건강한 사람들이 고민해서 기록해 나가면 되는 것이 아닐까 생각합니다.
私たちが常識として幾ばかりか判断できるもの、一部の人たちだけしか判断できないような問題ではなく、全ての人が共有できる程のものがニュースとしての価値があるということですね。
ジャーナリズムは毎日毎日記録してくものですが、ニュース価値の優先順位を決めるというのは、何をどのように記録していくかの問題なのではないか、そして、合理的で健康な人たちが悩んで記録していけば良いのではないかと思います。


※参考リンク
ビジネスポスト2015年1月19日配信「[Who Is ?]孫石熙JTBC報道担当社長([Who Is ?] 손석희 JTBC 보도담당 사장)」


JTBC「ニュースルーム」でのスクープ報道で、朴槿恵大統領不支持層の怒り爆発?



孫石熙氏がJTBC報道担当社長就任し、JTBCが評価を高め始めたのは、2014年に発生したセウォル号(세월호)沈没事故関連の報道を行った時でした。


JTBCは2014年4月に発生したセウォル号(세월호)沈没事故で他の放送局より詳細に報道したとして、地上波3社のKBS・MBC・SBSを凌ぐ高い評価を受けたそうです。


セウォル号沈没事故では朴槿恵大統領をはじめとした韓国政府の事故に対する対応の不適切さが非難の的となりましたが、この時期にJTBCは若者・中年を中心とした朴槿恵大統領不支持層からの信頼を得たと思われます。


「崔順実ゲート」関連では、JTBCが「ニュースルーム」の中で単独スクープとして朴大統領演説文漏洩疑惑の報道を行い、その翌日に朴大統領が疑惑を事実であるとを認め、韓国国民に謝罪する「対国民謝罪(대국민사과)」へと繋がっていきました。


こういった背景を考えると、JTBCのスクープ報道が、これまで不満をためていた朴大統領不支持層の怒りを爆発させ、朴大統領退陣要求に26万人もの人が集まった最大の要因であると言っても過言ではない、と僕は見ています。


JTBC「ニュースルーム」の中で、朴槿恵大統領演説漏洩疑惑のスクープ報道を行う孫石熙JTBC報道担当社長


※参考リンク


孫石熙JTBC報道担当社長が局員に向けて送ったメッセージ「謙遜して自重しよう」



JTBCのスクープ報道以降、翌日の朴槿恵大統領「対国民謝罪」をはじめとして、「崔順実ゲート」疑惑は拡大の一途を辿っています。
こうしてJTBCが再び注目を集めている中で、孫石熙氏JTBC報道担当社長は局員に向けて以下のようなメッセージを送ったとのことです。


이제 이후 jtbc는 또다시 가장 주목받는 방송사가 돼 있습니다.
채널에 대한 관심은 곧바로 구성원에 대한 관심으로 이어집니다.
겸손하고 자중하고 또 겸손하고 자중합시다.
만나는 모든 이들에게 그렇게 해야 합니다.
취재현장은 물론이고, 길가다 스처지나는 사람들에게까지도...
사실 이건 가장 신뢰받는 뉴스로 꼽힐 때부터 하고 싶은 말이었습니다.
제 자신이 잘 실천을 하고 있는지 모르겠으나 jtbc맨이라면 이젠 당연히 그렇게 해야 합니다.
今JTBCは再び一番注目を浴びる放送局になっています。
チャンネルに対する関心は、直ぐに局員に対する関心へと繋がります。
謙遜して自重し、また謙遜して自重しましょう。
出会う全ての人に対してそのようにしなければなりません。
取材現場は勿論のこと、道で通り過ぎる人にも。。。
事実これは一番信頼の置かれているニュースとして選ばれる時から、皆さんに伝えたい言葉でした。
私自身がちゃんと実践できているかはわかりませんが、JTBCマンならば今は当然そのようにしなければなりません。


보는 눈 많고 듣는 귀도 넘쳐다니 언제든 시비거리가 있으면 엄청나게 큰 반발로 우리를 덮쳐 올 것입니다.
게다가 금주 들어 내놓고 있는 단독보도들도 사람들을 속시원하게 하는 면도 있지만 동시에 깊이를 알 수 없는 자괴감에 빠지게도 하는 내용들입니다.
우리는 본의 아니게 사람들에게 치유하기 어려운 상실감을 던져주고 있기도 한 것입니다.
그러니 우리의 태도는 너무나 중요합니다.
見る目が多く、聞く耳も溢れているのですから、是非に関する論争が高まれば、いつでも溢れんばかりの反発として私たちを覆いつくすことでしょう。
更には、直ぐに手元に入ってきて伝えている単独報道も、人々の心をすっきりさせる面もありませんが、同時に内容を深く知ることができないという虚無感にも陥ります。
私たちは無意識の内に、世間に癒されることのない喪失感を与えてしまってもいるのです。
ですから、私たちの態度もものすごく重要なのです。


겸손하고 자중해도 우리는 이미 jtbc맨 이라는 평가를 받고 있으므로 손해볼 것이 없습니다.
그럼...
謙遜して自重しても、私たちは既にJTBCマンという評価を受けているのですから、損害を被ることはありません。
では。。。



※参考リンク
JTBC2016年10月26日配信「連日特集を伝える中JTBC孫石煕社長が局員に伝えたメッセージ(연이은 특종 속 JTBC 손석희 사장이 직원들에게 전한 메시지)」


終わりに‐韓国のニュースは、JTBCもチェックの必要有り!?



個人的には、数年前まではKBS・MBC・SBSのニュースを見れば、韓国社会のことをある程度知ることができると思っていました。
右派・左派の偏りが大きい傾向にある韓国マスコミの中にあって、KBS・MBCは右派寄り、SBSは左派寄りの報道をしていると感じていたからです。


しかし、SBSがKBS・MBCと大差ない報道内容に変わってきて、3社のニュースでは不十分と思うようになってきた中で、JTBCが同系列の中央日報とは思えない程の左派寄りの報道をしてきていることで、今ではJTBCもチェックする対象となるべき放送局であると感じています。


JTBCはニュース部門のYoutube公式チャンネルを持っていて、過去に放送されたニュースだけでなく、韓国で月曜日~木曜日の20:00~21:40に生放送される「ニュースルーム」も生視聴することができます。
韓国語がわかる方は是非視聴してみてはいかがでしょうか!


韓国のニュースを通して韓国語を勉強したい方は、こちらの書籍もご参考に!

2016/11/15

韓国最新政治事情‐JTBCによる「崔順実ゲート」疑惑拡大から、朴槿恵大統領退陣要求26万人大規模集会に至るまでの経緯を整理!

こんにちは、韓国政治の混乱を憂うタケオです。
韓国の朴槿恵(박근혜、パク・クネ)大統領の政権運営への、青瓦台(日本の首相官邸に相当)とは無関係の一民間人である崔順実(최순실、チェ・スンシル)氏関与疑惑、所謂「崔順実ゲート(최순실 게이트)」が韓国全体に波及して以降、朴大統領はこれまでにない危機に陥っています。
今回は疑惑拡大から11月13日までの経緯を整理してみたいと思います。


目次
1. 契機は朴槿恵大統領演説文に関するJTBCのスクープ
2. JTBCの「崔順実ファイル」入手ルートは?
3. 朴槿恵大統領 演説文の崔順実への漏洩を認め「対国民謝罪」
4. 「崔順実ゲート」 経済・芸術・芸能・スポーツ界にも波及
5. 崔順実をはじめとした疑惑渦中の人物逮捕・拘束
6. 朴槿恵大統領 「対国民談話」にて謝罪、検察の捜査を容認するも、辞任は拒否
7. ソウル中心部で朴槿恵大統領退陣要求26万人大規模集会開かれる
8. 野党は退陣要求、与党の非主流派からも弾劾訴追の声
9. 終わりに‐これからの展開は?


契機は朴槿恵大統領演説文に関するJTBCのスクープ



JTBC2016年10月24日配信「【スクープ】崔順実所持パソコンファイル入手 大統領演説前に演説文受け取っていた([단독]최순실 PC 파일 입수…대통령 연설 전 연설문 받았다)」の中で以下のように伝え、朴槿恵大統領の演説文が、演説前に一民間人である崔順実氏に漏洩されていたと報道しました。


최순실 씨 사무실에 있던 PC에 저장된 파일들입니다.
각종 문서로 가득합니다.
파일은 모두 200여 개에 이릅니다.
그런데 최 씨가 보관 중인 파일의 대부분이 청와대와 관련된 내용이었습니다.
崔順実氏の事務室に置かれていたパソコンに保存されたファイルです。
各種の文書でいっぱいです。
ファイルは全200余りに及びます。
崔氏が保管中のファイルの大部分は、青瓦台と関連した内容でした。


취재팀은 특히 "최 씨가 대통령 연설문을 수정했다"는 최 씨의 측근 고영태 씨의 진술과 관련해 연설문에 주목했습니다.
최 씨가 갖고 있던 연설문 또는 공식 발언 형태의 파일은 모두 44개였습니다.
대선 후보 시절 박 대통령의 유세문을 비롯해 대통령 취임 후 연설문들이 들어있었습니다.
그런데 최 씨가 이 문건을 받아 열어본 시점은 대통령이 실제 발언했던 것보다 길게는 사흘이나 앞섰습니다.
取材班は「崔氏が大統領演説文を修正した」という崔氏の側近コ・ヨンテ氏の証言と関連し、演説文に注目しました。
崔氏が持っていた演説文又は公式発言の形のファイルは全部で44個。
大統領候補だった当時朴大統領の遊説をはじめ、大統領就任後の演説文が入っています。
しかし、崔氏がこのファイルを受け取って開いた時期は、大統領が実際に発言した時より長くて4日も前のことでした。


상당수 대통령 연설문이 사전에 청와대 내부에서도 공유되지 않는다는 점을 감안하면 연설문이 사전에 청와대와 무관한 최 씨에게 전달됐다는 사실은 이른바 '비선실세' 논란과 관련해서 큰 파장을 낳을 것으로 보입니다.
相当数の大統領演説文が事前に青瓦台内部にも共有されていないことを考慮すると、演説文が事前に青瓦台と無関係である崔氏に渡っていたという事実は、所謂「秘線実勢」疑惑と関連し、大きな波紋を呼びそうです。


JTBCの「崔順実ファイル」入手ルートは?



JTBCはどのようにして崔順実氏所持パソコンを入手したのでしょうか。
JTBC記者は2016年10月24日配信「問題の崔順実ファイル このように入手した!経緯公開(문제의 '최순실 파일' 이렇게 입수했다…경위 공개)」で以下のように説明しています。


저희 취재팀은 사건 초기부터 최순실 씨가 이번 사건의 핵심으로 볼 만한 단서를 여럿 잡고 최 씨의 행적을 추적했습니다.
최 씨는 곳곳에 사무공간을 갖고 있었는데요.
대부분이 최 씨와 최 씨 측이 황급히 이사를 가고 아무 것도 남아 있지 않은 상태였습니다.
私たち取材班は崔順実氏が核心人物とみて、崔氏の行動を追跡しました。
崔氏は至る所に事務室を所有していますが、大部分は崔氏と関係者が慌てて引っ越ししようとしていて、何も残っていない状態でした。


그런데 그 곳 가운데 한 곳에서 최 씨 측이 건물 관리인에게 처분해달라고 하면서 두고 간 짐들이 있었습니다.
양해를 구해서 그 짐을 확인하는 과정에서 최 씨의 PC를 발견했습니다.
しかし、その中の一つの事務所で、崔氏関係者が建物の管理人に処分を頼んで置いて行った荷物がありました。
了解を得てその荷物の中身を確認していた過程で、崔氏のパソコンを発見したというわけです。


저희는 그 PC에서 이처럼 청와대 자료가 무더기로 들어있는 사실을 확인했습니다.
그때부터 관련 내용을 취재해서 오늘 보도한 내용들을 모두 확인할 수 있었습니다.
私たちはそのパソコンで青瓦台資料が多く保存されている事実を確認しました。
その時から関連内容を取材したため、本日報道した内容を全て確認することができました。


朴槿恵大統領 演説文の崔順実への漏洩を認め「対国民謝罪」



JTBCがスクープ報道を行った翌日の10月25日、朴槿恵大統領は自身が演説する前に崔順実氏に文面を見せたことを認めた上で、韓国国民に向けて以下のように謝罪しました。
以下は韓国国民に向けての「対国民謝罪(대국민 사과、テクンミンサグァ)」の内容の一部です。


※参考リンク
ソウル経済新聞2016年10月25日配信「朴槿恵対国民謝罪「崔順実から一部演説文の表現でアドバイスもらった」(박근혜 대국민 사과 "최순실, 일부 연설문 표현 도움받아")」


최순실 씨는 과거 제가 어려움을 겪을 때 도와준 인연으로 지난 대선 때 주로 연설, 홍보 분야에서 저의 선거운동이 국민에게 어떻게 전달되는지에 대해 개인적 의견이나 소감을 전달해주는 역할을 했습니다.
崔順実氏は過去私が大変な時期を過ごした時に助けてくれた縁で、前回の大統領選挙時に演説・広報分野で、私の選挙活動が国民にどのように伝わるかについて個人的意見や感想を述べてくれました。

일부 연설문이나 홍보물도 같은 맥락에서 표현 등에서 도움을 받은 적이 있습니다.
취임 후에도 일정 기간에는 일부 자료에 대해 의견을 들은 적도 있으나, 청와대 및 보좌체제가 완비된 이후에는 그만뒀습니다.
一部演説文や広報物も同じように表現などアドバイスを受けました。
就任後にも一定期間一部資料に対する意見を聞いていましたが、青瓦台及び補佐体制が整った後には、こういったことは止めました。


저로서는 좀 더 꼼꼼하게 챙겨보고자 하는 순수한 마음으로 한 일인데 이유 여하를 막론하고 국민 여러분께 심려를 끼치고, 놀라고, 마음 아프게 해드린 점을 송구스럽게 생각합니다.
국민 여러분께 깊이 사과드립니다.
私としては、もっと詳細に業務を遂行しようという純粋な気持ちで行ったことではありますが、いかなる理由であれ国民の皆様にご心配をお掛けし、驚かせ、心を痛めてしまったことに関して申し訳なく思っています。
国民の皆様に対して深く謝罪致します。




「崔順実ゲート」 経済・芸術・芸能・スポーツ界にも波及



JTBCのスクープを前後し、他の放送局も含めて報道合戦が繰り広げられ、朴槿恵大統領の演説文漏洩以外にも崔順実氏周辺で主に以下のような疑惑が浮上しました。


1. 財団法人ミル・Kスポーツ財団「私物化」
韓国文化芸術ブランド育成と、スポーツを通じての健全な社会作りのために設立されたという、財団法人ミル(재단법인미르)とKスポーツ財団(K스포츠재단)の運営に関し、崔順実氏と安鐘範(안종범、アン・ジョンボム)元青瓦台政策調整主席秘書官が大企業に対して該当財団に出資金を出すよう強要した疑い


2. サムスン電子、崔順実氏娘の乗馬選手としての育成のために資金援助
大韓乗馬協会(대한승마협회)の会長社であるサムスン電子株式会社(삼성전자주식회사)が、崔順実氏の娘である鄭維羅(정유라、チョン・ユラ)の乗馬選手としての援助のため、崔氏がドイツ内で運営しているヴィデックスポーツ社(WIDEC SPORTS)に約35億ウォンの資金援助疑惑


3. チャ・ウンテクCM監督 青瓦台人物を通じて広告制作権不正獲得
崔順実氏と関係の深かったチャ・ウンテク(차은택)CM監督が、安鐘範(안종범、アン・ジョンボム)前青瓦台政策調整主席秘書官と共謀して、大手通信会社KTに自身の側近を送り込んだ上で、崔氏が実所有する広告会社をKTの広告代行社として選ぶよう強要した疑い


※参考リンク
SBS2016年10月19日配信「「双子財団」ミル・Kスポーツ 一目でわかる関係図('쌍둥이 재단' 미르·K스포츠…한눈에 보는 관계도)」
聯合ニュース2016年11月7日配信「「鄭維羅特権」波紋に動揺する乗馬協会('정유라 특혜 지원' 파문에 쑥대밭 된 승마협회(종합))」
ハンギョレ新聞2016年11月11日配信「『崔順実ゲート』核心人物チャ・ウンテク拘束(‘최순실 게이트’ 핵심인물 차은택 구속)」


崔順実をはじめとした疑惑渦中の人物逮捕・拘束



崔順実氏に関する数々の疑惑が浮かび上がる中の10月31日、検察は崔氏の逮捕に踏み切りました。
また、安鐘範氏とチャ・ウンテク氏もそれぞれ11月2日と8日に検察に逮捕されています。


※参考リンク
ハンギョレ新聞2016年11月1日配信「検察 崔順実氏緊急逮捕「証拠隠滅・逃走を憂慮」(검찰, 최순실 긴급체포 “증거인멸·도주 우려”)」で以下のように伝えられています。
MBC2016年11月3日配信「安鐘範緊急逮捕 崔順実は今日拘束令状実質審査(안종범 긴급체포, 최순실 오늘 영장실질심사)」
SBS2016年11月9日配信「崔順実氏側近チャ・ウンテク逮捕 敏感な質問には答えず('최순실 측근' 차은택 체포…민감한 질문은 회피)」


朴槿恵大統領 「対国民談話」にて謝罪、検察の捜査を容認するも、辞任は拒否



崔順実氏という、政界とは全く無関係の一民間人の国政介入疑惑に、国民の政権に対する不信感が強まる中、11月4日、朴槿恵大統領は「対国民談話」にて、韓国国民に向けて2回目の謝罪をしました。
その中で朴大統領は、検察の捜査に協力すること、しかし政治運営に空白が生まれてはならないとして、大統領職の辞任は考えていないことを明らかにしました。
以下はその「対国民談話」の一部です。


※参考リンク
聯合ニュース2016年11月4日配信「朴槿恵大統領 崔順実関連疑惑で対国民談話」(박근혜 대통령, 최순실 파문 대국민담화)」では


저는 이번 일의 진상과 책임을 규명하는 데 있어서 최대한 협조하겠습니다.
이미 청와대 비서실과 경호실에도 검찰의 수사에 적극 협조하도록 지시했습니다.
필요하다면 저 역시 검찰의 조사에 성실하게 임할 각오이며 특별검사에 의한 수사까지도 수용하겠습니다.
私は今回の件で真実と責任所在を究明することに最大限協力します。
既に青瓦台秘書室と警護室にも、検察の捜査に積極的に協力するよう指示しました。
必要であれば私も検察の調査に誠実に臨む覚悟であり、特別検査による捜査も受ける所存です。


지금 우리 안보가 매우 큰 위기에 직면해 있고 우리 경제도 어려운 상황입니다.
국내외의 여러 현안이 산적해 있는 만큼 국정은 한시라도 중단되어서는 안 됩니다.
대통령의 임기는 유한하지만, 대한민국은 영원히 계속되어야만 합니다.
더 큰 국정혼란과 공백 상태를 막기 위해 진상규명과 책임추궁은 검찰에 맡기고 정부는 본연의 기능을 하루속히 회복해야만 합니다.
現在我が国の安保が大きな危機に直面し、経済も厳しい状況です。
国内外の様々な懸案が山積し、政治運営は一時も中断してはなりません。
大統領の任期は有限ですが、大韓民国は永遠に続いていかなければなりません。
更に大きな混乱と空白期間が生まれることを防ぐため、真実究明と責任追及は検察に任せ、政府は本来の機能を一日も早く回復させなければなりません。


국민들께서 맡겨주신 책임에 공백이 생기지 않도록 사회 각계의 원로님들과 종교지도자분들 여야대표님들과 자주 소통하면서 국민 여러분과 국회의 요구를 더욱 무겁게 받아들이겠습니다.
다시 한 번 국민 여러분께 깊이 머리 숙여 사죄드립니다.
国民の皆様が託して下さった責任に空白が生まれないよう、各界代表者・宗教指導者・与野党代表と連携を取りながら、国民の皆様と国会の要求を真摯に受け入れいます。
今一度、国民の皆様に深く頭を下げて謝罪申し上げます。




ソウル中心部で朴槿恵大統領退陣要求26万人大規模集会開かれる



朴槿恵大統領は2回も謝罪したにもかかわらず、その中に疑惑に対する自身の関与を詳細に語らず、辞任も明言しなかったことで、韓国国民の不満が頂点に達し、11月5日と11月12日にはソウル特別市(서울특별시)の中心部にある光化門広場(광화문광장、クァンファムンクァンジャン)にて朴大統領退陣要求大規模集会が開かれました。


特に、11月12日に行われた大規模集会では、ソウルだけでなく全国各地から人が集まり、警察発表で26万人(主催者側発表100万人)もの人が参加し、規模としては1987年に起きた民主化運動、所謂6月抗争(6월항쟁)以来最大規模となりました。


※参考リンク
東亜日報2016年11月12日配信「「朴槿恵退陣」100万人の市民 巨大な波ソウル都心を覆いつくす(“박근혜 퇴진” 100만 시민 거대한 물결, 서울 도심 뒤덮어…)」ではにあるように、


野党は退陣要求、与党の非主流派からも弾劾訴追の声



野党の共に民主党(더불어민주당)・国民の党(국민의당)・正義党(정의당)は、朴槿恵大統領に対して退陣を要求しています。


また、与党であるセヌリ党(새누리당)の中でも、朴大統領と距離を置く非主流派「非朴系(비박계)」から弾劾訴追に掛けるべきだとの声が強まっている一方、朴大統領に近い「親朴系(친박계)」は与野党合意の上で国務総理(국무총리、日本の首相に相当)を任命する「中立内閣(중립 내각)」を作ることを主張しており、セヌリ党は党内分裂の様相を呈しています。


※参考リンク
KBS2016年11月14日配信「退陣・弾劾論議 本格化する政界(‘하야·탄핵’ 논의 본격화하는 정치권)」


終わりに‐これからの展開は?



まず焦点となるのは、朴槿恵大統領に対する検察の事情聴取です。
検察の捜査に協力の意思を示している朴大統領ですが、検察は朴大統領に対する事情聴取を11月16日頃に予定しており、そこで新たな事実が明らかになるかが注目されます。


一方、韓国マスコミの間では、朴大統領は2018年2月まで残りの任期を全うするのは非常に厳しく、その後のシナリオとしては弾劾訴追若しくは退陣との見方が大勢を占めています


弾劾訴追と退陣表明後の主なプロセスは以下の通りです。


○弾劾訴追
検察による捜査と、最長120日の特別検察による捜査終了後、在籍国会議員数3分の1以上の署名で弾劾訴追案発議、在籍国会議員数3分の2以上の賛成で可決。
憲法裁判所が180日以内に弾劾是非を決定し、弾劾決定の場合60日以内に大統領選挙。
大統領選挙までの間は国務総理等が大統領職を代行。
新たに選出される大統領の任期は5年。

○退陣
退陣表明後60日以内に大統領選挙実施。
大統領選挙までの間は国務総理等が大統領職を代行。
新たに選出される大統領の任期は5年。


弾劾訴追に関しては、盧武鉉(노무현、ノ・ムヒョン)大統領時に弾劾訴追案可決までいった例がありますが、任期途中の退陣は前例がないことから、今後どのように展開されるのか注目されます。


※参考リンク
NEWSIS2016年11月4日配信「大統領欠位時次期当選者任期は「無条件5年」(대통령 궐위 시 차기 당선자 임기는 '무조건 5년')」
韓国経済新聞2016年11月8日発行「野党から高まる退陣・弾劾を求める声 退陣時60日以内に大統領選挙(야당서 커지는 하야·탄핵 목소리…하야땐 60일 내 대통령 선거)」


現代韓国や朴槿恵氏については、こちらの書籍もご参考に!

2016/11/13

世界新聞(株)寄稿第3弾は、ドイツ・ベルリンで本格的な寿司を味わえる日本食レストラン「一心(Ishin)」!

こんばんは、2016年11月現在で21ヶ国歴訪のタケオです!


世界新聞(株)への3回目寄稿記事が掲載!



世界新聞(株)への記事寄稿・掲載について、本日第3弾が掲載されました!


記事内容は、ドイツ・ベルリンで本格的な寿司を味わえる日本食レストラン「一心(Ishin)」の紹介です!
ベルリンの日本料理店「一心(Ishin)」で寿司を食べてみた!を再編集し、寄稿したものです。


下記リンクから是非ご覧ください!


寿司への想いが本気…!ドイツ・ベルリンの日本食レストラン「一心」で食べてきた


「一心」シャルロッテン通り店(Charlotten Straße)の外観


昼時の「一心」シャルロッテン通り店(Charlotten Straße)の様子。
ドイツ人ビジネスマンで連日いっぱいです!


「一心」の寿司メニューの一つ「竹」。
通常13ユーロ(約1,510円)のところ、月・火・水・木の16:00までと水・土は「ハッピーアワー」として、9.80ユーロ(約1,130円)で食べられます!


※世界新聞運営者の書籍はコチラ!



引き続き、本ブログと世界新聞での記事を楽しみにして下さい!


「海外での寿司」に関することは、コチラの書籍もどうぞ!

2016/11/10

2016年アメリカ大統領選挙トランプ共和党候補当選に対するドイツ政府閣僚・韓国マスコミの反応

こんばんは、今後のアメリカの未来を案ずるたけちゃんです。
現地時間2016年11月8日(火)に行われたアメリカ大統領選挙にて、ドナルド・トランプ(Donald Trump)共和党候補が、ヒラリー・クリントン(Hilary Clinton)民主党候補を破り、第45代アメリカ合衆国大統領となることが決まりました。
今回はアメリカ大統領選挙結果に対するドイツ閣僚・韓国マスコミの反応を見ていきたいと思います。


目次
1. アメリカ大統領選挙結果に対するドイツ政府閣僚の反応
2. アメリカ大統領選挙結果に対する韓国マスコミの反応
3. 終わりに


アメリカ大統領選挙結果に対するドイツ政府閣僚の反応



2016年11月9日ARD配信「トランプ勝利に対するドイツ閣僚の反応「民主主義的価値を基に協力」(Deutsche Reaktionen auf Trump-Sieg "Zusammenarbeit auf Basis demokratischer Werte")」では、アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相をはじめ、フランク=ヴァルター・シュタインマイアー(Frank-Walter Steinmeier)外務大臣、ジグマール・ガブリエル(Jigmar Gabriel)副首相、ウルズラ・フォンデアライエン(Ursula von der Leyen)防衛大臣等、各閣僚の反応を取り上げながら、次のように書いています。


In Deutschland überwiegt der Schock nach dem unerwarteten Trump-Sieg.
Viele Spitzenpolitiker äußerten sich skeptisch, wie die künftige Zusammenarbeit aussehen könnte. Die Kanzlerin rief Trump auf, demokratische Grundwerte zu achten.
Nur die AfD zeigte unverhohlene Freude.
ドイツにとって予想していなかったトランプの勝利は大きなショックだ。
多くの政治家がこれからの協力関係について疑問を呈した。
メルケル首相はトランプ氏に対し、民主主義の根底を忘れないよう忠告した。
「ドイツのための選択肢(AfD)」だけが今回の結果を歓迎した。

Deutsche Spitzenpolitiker setzen auf Kontinuität im Verhältnis mit den USA - auch wenn die Beziehungen mit dem neugewählten US-Präsidenten Donald Trump komplizierter werden dürften.
メルケル首相は、「ドナルド・トランプ米新大統領との関係が複雑になろうとも、アメリカとの関係は継続する」と述べた。

Bundeskanzlerin Angela Merkel gratulierte Trump zur Wahl, erinnerte ihn in einem kurzen Statement aber zugleich an seine Verantwortung für die weltweite Entwicklung.
Demokratie, Freiheit, den Respekt vor dem Recht und der Würde des Menschen unabhängig von Herkunft, Hautfarbe, Religion, Geschlecht, sexueller Orientierung oder politischer Einstellung - das seien Werte, die Deutschland mit den USA gemeinsam hätten.
"Auf der Basis dieser Werte biete ich dem künftigen Präsidenten der Vereinigten Staaten von Amerika, Donald Trump, eine enge Zusammenarbeit an", so Merkel.
メルケル首相はトランプ氏の大統領当選を祝う一方で、彼に世界規模での発展に寄与するよう次のように呼びかけた。
「民主主義、自由、法の尊重そして尊厳は、出自・人種・宗教・性別・性的指向・政治的思考に関係なく価値のあるもので、ドイツ・アメリカ共に共有しているものである。
この基本的価値を基にした上で、私は次期アメリカ大統領ドナルド・トランプと緊密に協力する。
 
Außenminister Frank-Walter Steinmeier sprach hingegen vor transatlantischen Beziehungen, die nun schwerer einzuschätzen seien. "Ich will nichts schönreden, vieles wird schwierig." Diese Beziehungen sei jedoch so etwas wie das Fundament des Westens, sagte der SPD-Politiker. Deshalb werde die Bundesregierung das Gespräch mit dem künftigen Präsidenten suchen. Das Wahlergebnis sei anders, als es sich viele Deutsche gewünscht hätten, sagte Steinmeier. "Aber wir haben das Ergebnis zu akzeptieren und akzeptieren es."
一方、フランク=ヴァルター・シュタインマイアー外務大臣は「これからの欧米外交は難しいものになると見ている。しかし欧米外交は西側諸国の基礎であるため、政府としては次期大統領との会談をセッティングできるよう努力する。今回の選挙結果は多くのドイツ国民にとって望ましいものではないが、結果は結果として受け入れなければならない」と語った。
 

Vizekanzler und SPD-Chef Sigmar Gabriel fürchtet dagegen negative Folgen für die politische Entwicklung in Deutschland und Europa.
Er bezeichnete Trump als "Vorreiter einer neuen autoritären und chauvinistischen Internationalen". Der Republikaner wolle ein "Rollback in die alten, schlechten Zeiten", sagt der Wirtschaftsminister der Funke Mediengruppe.
ジグマール・ガブリエル副首相は、ドイツそして欧州での政治的発展に及ぼす悪影響を懸念した。
副首相はトランプ氏を「新しい独裁者の先駆者で愛国主義の国際人」と非難し、「共和党員は古くて悪い時代に逆戻りしたいのだろう」と述べた。

Verteidigungsministerin Ursula von der Leyen sprach in der ARD von einem schweren Schock.
Doch Trump wisse auch, dass dies nicht eine Wahl für ihn sei, sondern gegen Washington, gegen das Establishment.
フォンデアライエン防衛大臣はARDスタジオでトランプ氏の勝利を「
非常にショック」と話した一方で、「しかしトランプ氏も今回の選挙は自身への支持ではなく、ワシントン、すなわち現政権への反発の表れであることを理解していると思う」と語った。
"Aber auch wir werden fragen: Wie steht ihr zum Bündnis?", sagte von der Leyen mit Blick auf Wahlkampfäußerungen Trumps, der die Rolle der USA in der Militärallianz in Frage gestellt hatte.
Europa werde sich darauf einstellen müssen, dass es besser selber vorsorge.
Dazu gehöre auch ein höheres Verteidigungsbudget.
フォンデアライエン防衛大臣は更にNATOへのアメリカの関与について疑問を呈したトランプ氏の発言に関連して「「同盟はどうするつもりか」と問いたい。欧州は独自で防衛ができるよう準備する必要があるだろう。それによって防衛費の規模も変わってくる」と述べた。


アメリカ大統領選挙結果に対する韓国マスコミの反応



朴槿恵(박근혜、パク・クネ)韓国大統領は、トランプ次期米国大統領と電話で会談し、米韓同盟の重要性を確認させたようですが、韓国の複数のマスコミは、これまでのトランプ氏の発言を分析した上で、これからの米韓関係が厳しい局面に入るとの見方をしています。


2016年11月9日朝鮮日報配信「「駐韓米軍の費用100%負担」トランプ当選が韓国に及ぼす影響は?("주한미군 비용 100% 부담하라" 트럼프 당선이 한국에 미칠 영향은?)」では、次のように書かれています。


트럼프의 보호무역주의가 수출 의존도가 높은 한국 경제에 부정적 영향을 미칠 것으로 보인다.
트럼프는 과거 한국의 대미(對美) 무역흑자 불균형에 대해 언급했고, FTA(자유무역협정) 등 무역 협약을 무효로 하겠다고 선언하기도 했다.
トランプ氏の保護貿易主義が、輸出依存度の高い韓国経済に悪影響を及ぼすと見られる。
過去にトランプ氏は韓国の対米貿易黒字の不均衡に対して言及し、FTA(自由貿易協定)等貿易協約を無効にすると発言していた。
트럼프의 말대로라면 미국이 만성 적자를 보이는 한미 FTA의 협정개정을 요구할 가능성도 있다.
기획재정부의 한 관계자는 이날 “트럼프 당선자가 FTA 재협상 등 극단적인 언급을 해왔던 만큼 일어날 수 있는 모든 시나리오에 대비하고 있다”고 말했다.
トランプの発言通りになれば、アメリカが慢性的な赤字に陥っている米韓FTA協定の改定を要求する可能性もある。
企画財政部(日本での財務省に相当)の一関係者は「トランプ次期大統領がFTAの再締結等極端な言及をしているため、起こり得る全てのシナリオを想定している」と述べた。
트럼프가 백악관에 입성하고서도 방위비 분담금을 포함한 한미 양국간 국방정책에 기존 입장을 고수할지에도 관심이 쏠린다.
トランプ氏がホワイトハウスに入居しても、防衛費分担金を含めた米韓両国間の安全保障政策に関して既存の立場を維持するかにも注目が集まっている。
트럼프는 지금까지 ‘안보 무임승차론’을 운운하며 한국이 지금보다 더 많은 분담금을 내야 한다고 주장했다.
이 때문에 주한미군 주둔에 따른 비용 부담이 커질 것이라는 우려가 크다.
トランプ氏はこれまで韓国の「安保無賃乗車論」に言及し、韓国が今より多くの金額を負担しなければならないと主張した。
このために駐韓米軍の駐屯による費用負担が一層重くなるという懸念が大きい。



終わりに



ドイツと韓国は、2016年9月26日CBS配信「ヒラリー・クリントン対ドナルド・トランプ第1回討論での発言(Fact checking the first Hillary Clinton-Donald Trump debate)」の中にあるように、防衛費をしっかりと負担していないとして、トランプ氏から日本と共に名指しで批判されているということもあり、今回のトランプ氏当選にはショックを隠し切れない様子が窺えます。


そういった中でも、ドイツ政府は移民の数制限や米国優先主義には批判的な立場であることから、自分たちの立場を堅持しつつ妥協点を探っていく姿勢を見せていると思います。


一方韓国は、所謂「崔順実ゲート(최순실 게이트)」と呼ばれている一連の便宜供与疑惑で朴大統領が四面楚歌の状況の中、強固な関係を維持したいアメリカの大統領に、できれば当選して欲しくなかったであろうトランプ氏が当選したということで、これからアメリカとの関係をどう維持していこうかの戦略を練り切れておらず、右往左往しているように見えます。


アメリカ史上初めて公職経験のない人が大統領になるということで、日本・韓国・ドイツのみならず世界中が注目している今後のアメリカの行く末を注視する必要があると思います。


ドナルド・トランプ氏のことについて詳しく知りたい方は、こちらの書籍もご参考に!

2016/11/06

列車内での「マナーを守る」とは!?-東急電鉄マナー向上広告とドイツ・韓国留学経験から考える

こんばんは、鉄道旅行好きのタケオです。
最近東京急行電鉄株式会社(以下東急電鉄)より公開された、「わたしの東急線通学日記」と題されたマナー向上広告を巡り、ちょっとした論争が起きているようです。
そこで今回はこの広告を通して、「マナーを守る」とは一体何なのか、思うところがあったので、書きたいと思います。


目次
1. 「わたしの東急線通学日記」について
2. 東急電鉄マナー向上広告車内化粧篇で論争巻き起こる
3. 東急電鉄マナー向上広告車内化粧篇に対し、海外からも反応
4. 東急電鉄マナー向上広告に対する個人的見解
5. 「列車内でのマナー」に対する個人的見解の変化
6. 海外での列車内の様子を見てきて完全に変わった、マナーに対する見解
7. 日本社会の一部に見られる、列車内での行動に対する見解の現状
8. 終わりに:不必要なことにまで注意したり、他人に干渉するような社会は、住みやすい社会なのか


「わたしの東急線通学日記」について



東急電鉄では、「わたしの東急線通学日記」公開にさいして次のような文言を掲載しています。


マナー向上への取り組みとして、マナー広告とドラマを融合させた新しいシリーズをスタートしました。
駅ばりポスターと動画にて、東急線で日常的にトラブルにつながるような利用シーンなどをストーリー仕立てに描写します。
ご利用いただいているお客さまの目線でマナーに対するメッセージを発していくことで、ひとりでも多くのお客さまの気づきにつながるようにするとともに、マナー向上へのご理解とご協力を呼びかけていきます。


Youtubeにも次の4つのマナー向上広告の動画が上がっています。


東急電鉄マナー向上広告整列乗車篇


東急電鉄マナー向上広告荷物篇


東急電鉄マナー向上広告「歩きスマホ篇」


東急電鉄マナー向上広告「車内化粧篇」


東急電鉄マナー向上広告車内化粧篇で論争巻き起こる



2016年10月27日付産経ニュース「車内化粧、みっともない? マナー動画に反発、論争も」では以下のように伝えています。


電車内で化粧をする女性。その姿を批判的に描いた東急電鉄のマナー向上広告の動画が、ネット上で波紋を呼んでいる。「恥ずかしいことだ」と動画に賛同する人がいる一方で、「何がいけないの?」と反発する声も。「みっともなさ」の感覚や公共の場での振る舞いを巡って論争が起きている。


東急電鉄マナー向上広告車内化粧篇に対し、海外からも反応



2016年10月28日付米ワシントン・ポスト「日本の広告「車内化粧はみっともない(Women doing their makeup on the train are ‘ugly,’ says Japanese commercial)」を執筆した記者は、女性の日本労働市場への進出の低さと関連付けて、次のように書いています。


The ad frowning on women — many of whom are presumably on their way to work — comes at a time when the Abe government is trying to break down gender barriers encourage more women into the workplace.But ads like this and court decisions like the recent ruling that married women can not use their maiden names, even at work, show just how far Japan has to go. 
(おそらく殆どが仕事に向かう途中であろう)女性に向けられたこの広告は、安倍首相が男女間の労働差別をなくし、労働市場への女性進出を促そうとしている矢先に作られた。このような広告や、仕事場であっても旧姓使用を認めない最近の判決は、男女間の労働差別解消への道のりが果てしなく長いことを示している。


また、2016年10月28日付韓国東亜日報「『化粧は家で』日本鉄道会社のマナー広告に『女性抑圧』vs『マナーが悪い』舌戦(‘화장은 집에서’ 日 지하철 예절 공익광고에 “여성억압” vs “비매너” 설전)」では、韓国でも同じような論争が起こっているとして、以下のように伝えています。


지난해 한 일간지가 ‘지하철에서 화장하는 여자’라는 제목의 칼럼을 실은 후 온라인 공간에서는 “남에게 피해를 주지 않는데 뭐가 문제인지 모르겠다”,“바쁜 출근시간 남성보다 챙길게 많은 여성에게 그것마져 못하게 하냐”는 의견과 “바로 옆에서 풍기는 화장품 냄새는 어떤 이에게 거북할 수도 있다”,“우리나라 사람만 전철에서 화장을 한다. 외국인은 이상하게 본다”등의 의견이 충돌했다.  
昨年ある日刊紙が「地下鉄で化粧をする女性」という題目でコラムを載せた後、ネットでは「他人に被害はないのに何故問題なのか」、「忙しい出勤時間、男性よりやらなきゃいけないことが多いのに化粧さえもダメなのか」という意見と「目の前で漂う化粧品の匂いのせいで気分が悪くなることがある」、「地下鉄で化粧をするのは韓国だけ。外国人は可笑しく思っている」等の意見が飛び交った。

지난 4월 서울도시철도공사가 집에서 화장을 미처 하고나오지 못한 여성을 위해 지하철역에 파우더룸을 설치한다는 소식이 전해진 후에도 같은 논쟁이 벌어졌다. 
昨年4月にはソウル都市鉄道公社(ソウルで地下鉄を運営する公社)が、家で化粧をすることができない女性のために、地下鉄駅にパウダールームを設置すると発表した直後にも、論戦が繰り広げられた。


東急電鉄マナー向上広告に対する個人的見解



僕は、東急電鉄マナー向上広告で取り上げられた4つの事例に関して、整列乗車・歩きスマホは理解できるも、荷物・化粧については「ちょっと違うんじゃないか」と思いました。
その理由は以下の通りです。


◎整列乗車

順番を守るべきだという考えに同意するのと、足腰の不自由な方や妊婦等が優先であるところを考えていないことが問題、と考えるからです。


◎歩きスマホ

不意にぶつかることで大きなケガを負わせる危険性がある、と考えるからです。


◎荷物

大きい荷物が目の背後にあることで、ぶつかっていることに気づきにくいことは確かですが、荷物を前に背負っても、限られた空間の中でかなりのスペースを占めることには変わりなく、あまり効果がないと思います。


そういうことを考えると、事情によりどうしても大きな荷物を持たざるを得ない乗客にしては、広告の最後に出てくるように「大きな荷物は周囲にご配慮下さい」と言われても、後ろに背負うと無意識に他の乗客にぶつかる可能性があるけれども、前に背負っても必要以上のスペースを占めてしまうし、「じゃあどうすれば良いの?」とならざるを得ないと思うからです。


大きい荷物を持つ人となると、例をあげれば出張や旅行目的でスーツケースを運ばざるを得ない人もいるわけで、そういう人はどうすれば良いのか、となると論争が終わらない気がしてならないのです。


◎化粧

「マナー」というのは、他人に迷惑を掛けないために「守る」ものだと思うのですが、主人公の女性が言っている「みっともない」というのは、広辞苑によれば「見るに堪えない」ということで、本当に迷惑を掛けているわけではないので、筋違いであると思うからです。


もしかしたら、「『見るに堪えない』というのも他人に迷惑をかけているのでは」という方もいるかもしれませんが、ある行動に対して「みっともない」と考える度合は(特に現代社会においては)人それぞれであり、特定の人が「みっともない」という理由だけで止めるよう指図するのは、他人への干渉が強すぎると思います。


「列車内でのマナー」に対する個人的見解の変化



上記のように書いた僕も、高校生の頃までは、「列車内でのマナーは絶対に守るべき」と考える人でした。
列車の車内で着信音が鳴るのを聞いたり、化粧をしている人を見る度に「マナーがなっていない」と思って、イライラしていました。


しかし、列車内でのマナーに対する見解が変わり始めたのは、「リュックサックは前に抱えるか、網棚の上に載せるようにしましょう」というマナー喚起が出てきた時からだったように思います。


僕が大学に通っていた時は、小さな鞄では必要な教科書・ノート・辞書が入りきらないということで、リュックサックで通学していましたし、2、3日程度の国内旅行に出掛ける時は、必要な物や着替え等をリュックサックの中に詰めて旅行していたので、どうしてもリュックサックはある程度パンパンな状態。


そうしていた中で、上のような注意をされても、「両足の間に置くのならまだわからなくはないけど、前に抱えたってかなりのスペースを占めるわけだから、やっぱり迷惑だと思う人もいるかもしれないし、網棚の上に載せられないほどの荷物だったらどうするんだ」と反発心が先に来てしまい、完全には納得できなかったのです。


海外での列車内の様子を見てきて完全に変わった、マナーに対する見解



そして、列車内でのマナーに対する見解が完全に変わったのは、海外旅行に出掛けるようになったり、ドイツと韓国に長期語学留学したりした時でした。


僕は海外21ヶ国を旅行していますが、どの国でも列車等の公共交通機関内でのマナー喚起に関するアナウンスを聞いたことが一度もありません。
また、ドイツ等欧州では、列車内に自転車を持ち込んだりペットと一緒に乗ることは、許されていることもあってか別に珍しくないですし、パフォーマーが突然パフォーマンスを始めて演奏を行うこともあります。


僕が一番驚いたのは、ベルリン・オリンピアシュタディオン(Olympiastadion Berlin)で行われるヘルタ・ベルリン(Hertha BSC)のホームゲームを見に行こうと地下鉄(U-Bahn)に乗った時に、地下鉄車内でチャントを大声で歌いながら騒ぐサポーターの姿を見たときでした。
僕は埼玉県出身で浦和レッドダイヤモンズのホームゲームを良く見に行っていましたが、日本の中でサポーターが熱狂的なことで知られる浦和サポーターでも、埼玉高速鉄道線車内では静かに乗っているので(笑)、尚更驚きました。


ベルリンを走る通勤電車Sバーン(S Bahn)で見かけた、自転車を持ち込む乗客。
休日であることと沿線に保養地がある、ということもありますが、折り畳みでもなく普通の自転車を持ち込む乗客もいました。


ベルリン地下鉄U2線オリンピアシュタディオン駅から、ベルリン・オリンピアシュタディオンに向かうヘルタ・ベルリンサポーター。
試合が始まる数時間前にもかかわらず、地下鉄車内はサポーターのチャントが響いて、かなりうるさかったです(苦笑)。


尚、昨年2015年にベルリン市交通局(BVG, Berliner Verkehrsbetriebe)より公開され、動画"Is' mir egal(構わないさ)"は、地下鉄内での様々な行動に対して「構わないさ(Is' mir egal)」とか「ダメですよ(Is' mir nicht egal)」と歌っていて、ベルリンだけでなくドイツ中で話題になりました。


「構わないさ」と判断されている行動の中に、「1ヶ月定期保持者」というありきたりなものだけでなく、「馬に乗りながら乗車する」・「玉ねぎを切る」・「チーズを削る」といった、Is' mir nicht egalでしょうと思うような行動まで「構わないさ」と歌っているのは流石にやり過ぎかなという面はなくはないですが、ベルリンに6ヶ月滞在していた経験から見て、そういった行動まで「構わないさ」と言ってのけてしまうかもしれないような雰囲気がベルリンにあるのは間違いないと感じます。


ベルリン市交通局公開動画「構わないさ(Is' mir egal)」


韓国では、列車内で携帯電話で(しかも小さくない声で)通話するとか、女性が化粧をするといったことはよくあることですし、特に地下鉄内では物売りもいます。


ソウルの地下鉄車内で雨合羽を売る物売り。
カートを運びながら車内を歩き回るので、日本からしたらかなり迷惑がられるでしょう(苦笑)。


そういったことを経験し、帰国してから日本の列車に乗ってみると、今まで気になっていた車内での化粧とか、携帯電話での通話とかが不思議と気にならなくなっていたんです。


そう感じた時に思いました。


僕がイライラしていたのは、「マナーがなっていないから」ではなく、「自分は他者からのマナー喚起にのっとってしないようにしていることを平気な顔でされるから」なのだと。
そして「『そういう人もいる』と思えば別に気にならないことに対して、余計な考えのせいでイライラしていた」ということに気づいたんです。
(更に個人的なことまで言ってしまって申し訳ないですが、、主に小・中学校時代の経験から怒声又は誰か一人でも起こりそうな雰囲気に対するトラウマがあり、マナー喚起されているような行動を見かけると、「誰かがそのうち怒り出すのでは」と過剰に意識しすぎていたのでは、ということもあります。)


今では「列車には様々な人が乗り込む場所であるのだから、他人にケガを負わせるような行動でなければ、列車内の行動に対して他人が口出しをするものではない」という考えに変わったと同時に、「他人にケガを負わせるような行動だけでなく、個人の価値観に依るような行動までも対象にされる日本でのマナー喚起は少しやり過ぎ・筋違いな部分があるのではないか」と思うようになりました。
東急電鉄マナー向上広告に対して、全て賛同できなかった背景がここにあるのです。


日本社会の一部に見られる、列車内での行動に対する見解の現状



日本では禁止されているわけではないけれども自転車を列車内に持ち込む人や列車内で大声を叫ぶ人は殆どいなく、他人に迷惑を掛けないという意味での「マナーを守る」から更に一歩踏み込んで、他人の気持ちに配慮しようという姿勢は良いと思います。


その一方で、自分に特段迷惑が掛かるわけでもない行動に対し、自分だけの価値観にとらわれ過ぎた結果、「気に入らない」とか「みっともない」というだけで激しく注意してしまうことも少なくない、というのが現状ではないでしょうか。
そんな一部の人たちが訴えたからこそ、今回論争になっている、東急マナー向上広告化粧篇のような広告が製作されたのでしょうう。


このような状況が生まれる背景には、都市部での満員電車に代表されるように、「狭いところに押し込まれて窮屈に乗っているのに何であの人は」とか、「公共の場」というのを過剰に意識し過ぎて、「自分は他人に配慮しながら乗っているのに何であの人は」とかいう感情が根底にあるのではないかと考えます。


終わりに:不必要なことにまで注意したり、他人に干渉し過ぎるような社会は、住みやすい社会なのか



海外での事例では、日本では滅多に見られないような光景ばかり記載しましたが、海外だって勿論完全に無秩序なわけではありません。
ベビーカーを押す人が現れたら周りの人が手助けしますし、足腰の不自由な人や妊婦等に席を譲ります。


しかし、自分に被害がないような行動には個人の判断に任せるような雰囲気があり、そのような行動に対する不必要な注意はおろか、不機嫌そうな表情も見掛けませんでした。
(「個人の判断に任せる」というのは、「自分でしっかり考えを持った上で行動しているなら構わない」というスタンスであり、決して「どんな行動もとっても良い」というのではありません。)


「海外の事例を持ち出すでない」という方もいるかもしれませんが、僕が問いたいのは、「海外がこうだから日本も倣うべき」というのではなく、「不必要なことにまで注意したり、他人に干渉し過ぎたりするような社会は、住みやすい社会なのか」という本質的な問題です。
そういったことが日常茶飯事になれば、注意される対象になった人の気持ちを害すだけでなく、注意する人自身も不必要なイライラが残るだけで、結局は何の得にもならないと思います。


周りで起こる状況に対し、自分本位の考えにとらわれ過ぎることなく、短絡的に結論を出すことなく、背景等しっかり考えてから判断し、行動に移せるようになるべきではないでしょうか。


マナーや鉄道に関することは、こちらの書籍もご参考に!