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2015/10/18

文化の海外発信に戦略は必要か?‐韓国K-POPの事例から考える

2015年10月18日放送のNHK-FM『トーキング ウィズ 松尾堂-落語と文学から日本文化を探る』の中で、司会の松尾貴史さんとゲストのロバート・キャンベル東京大学大学院教授との下記のようなやりとりがありました。


松尾さん「文学を無理やり海外用に変える必要はないということでしょうか?」
キャンベル教授「それはないですね!」


このやりとりを聞いていて、僕も全くその通りだと思いました。
キャンベル教授が仰っていた通り、作者と海外発信の橋渡しとなるエージェントは必要かもしれませんが、海外の多くの人に受け入れられるようにという名目で、元々の素材まで海外仕様にする必要は全くないと思います。
なぜならば、素材を海外仕様にすることで、本来持っていた素材の良さが失われてしまっては、その国の文化とは言えなくなってしまうからです。


なぜこのように考えるかというのは、韓国におけるK-POPの海外戦略の推移を見てきたからです。
韓国遍歴と、韓国語勉強に使用した教材紹介  Part 2でも書いた通り、僕は韓国の女性アイドルグループ少女時代にハマっていたのですが、その関連で他のグループが発表した歌も聴いてきました。
その中で、最新ものから1990年代までの曲を聴いている内に、昔の曲の方が、韓国らしい(これは日本のJ-POPにも少し似ていると思っているのですが)情緒さが深いような印象を受けたのです。
最新ものというのは、韓国の作曲家或いは作詞家が欧米の音楽から強い影響を受けていたり、欧米のプロデューサーが直接楽曲作成に携わっているものが多く、短くて簡単なフレーズの繰り返しと激しいダンスが東アジア・東南アジアを中心に受けていて、それが現在の海外戦略に走らせる要因の一つであると思われますが(更なる要因と考えられる韓国内の内需の少なさを、もう一人のゲストである落語家の桂かい枝さんが言及していましたが)、その反面韓国らしい情緒が失われてしまったように思うのです。(インディーズでは今でも韓国らしい情緒が残っているかもしれませんが。)


短期的な商業面のみを考えれば素材自体を変えることも良いのですが、それではせっかくの独特さが失われ、長期的な視点で見れば客観的視点から見た魅力がなくなりかねません。
寿司を中心に世界的に受け入れられつつある日本食も、他の食文化にはない『出汁の旨み』があってこそ受け入れられているのであり、それがなく単に濃いか薄いかの味付けでは、日本食の特徴がなくなってしまいます。


ですから、自国の文化を海外に広めたいと思っても、無理に素材を変えることをせず、その他にはない独特さをどうやって伝えていけばいいかに力を注ぐのが良いと思うのです。


韓国独特の情緒の深さが感じられる曲の例
『ガチョウの夢(거위의 꿈)』(1997年発表)


現代K-POPの先駆けとなった象徴的な曲『Tell Me』(2007年発表)



K-POPを含めた所謂『韓流』と、韓国での『日流』を複合的に分析した本がこちら↓

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