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2016/06/25

イギリス国民投票で欧州連合(EU)離脱の結果となったことに対するドイツ政府・メディアの反応について

こんばんは、欧州の先行きに不安を感じているタケオです。
イギリスにおいて現地時間2016年6月23日に行われた欧州連合(以下EU)離脱に関する国民投票において、EU離脱への賛成票が51.9%の過半数を超えたことで、イギリスがEU離脱に向けた交渉を進めることになりましたが、
これに対してドイツの政府やメディアがどう反応したのか興味を持ったので、このことについて書いてみたいと思います。


◎独メルケル首相の反応


ドイツのアンゲラ・ドロテア・メルケル(Angela Dorothea Merkel)首相は現地時間2016年6月24日朝に、連邦首相府に各政党の党首等を緊急招待して対応を協議した後、午後に緊急記者会見を行いました。
約6分間続いた記者会見の内重要な部分を訳したいと思います。


※参考リンク
2016年6月24日イギリスのEU離脱に関するメルケル首相記者会見全文|ドイツ連邦共和国政府


Der heutige Tag ist ein Einschnitt für Europa.
Er ist ein Einschnitt für den europäischen Einigungsprozess.
6月24日は、欧州又は欧州の統合プロセスにとって一つの転機の日となりました。

Was die Folgen dieses Einschnitts in den nächsten Tagen, Wochen, Monaten und Jahren genau bedeuten werden, das wird ganz entscheidend davon abhängen, ob wir, die anderen 27 Mitgliedsstaaten der Europäischen Union, uns als willens und fähig erweisen werden, in dieser Situation keine schnellen und einfachen Schlüsse aus dem Referendum in Großbritannien zu ziehen, die Europa nur weiter spalten würden, sondern ob wir willens und fähig sein werden, die Lage mit Ruhe und Besonnenheit zu analysieren, zu bewerten und auf dieser Grundlage gemeinsam die richtigen Entscheidungen zu treffen.
数日後・数週間後・数ヶ月後、或いは数年後に、この転機の結果が何を意味するのかは、正に私たちイギリス以外の27のEU加盟国が、いかにこのような状況の中で、欧州を更なる分裂へと加速させるような拙速な決断をせず、今回の結果を冷静かつ慎重に分析・評価し、正しい決断を生み出せる意欲・能力があるかにかかっています。

Dabei sollten wir Folgendes beachten:
これに際して私たちは次のことに注意しなければなりません。

Erstens. Europa ist vielfältig.
So unterschiedlich die Menschen in Europa sind, so unterschiedlich sind auch ihre Erwartungen an die Europäische Union.
一つ目、欧州は多様である。
欧州の人々は千差万別であるため、彼らがEUに期待するものも様々です。

Wir müssen deshalb sicherstellen, dass die Bürgerinnen und Bürger konkret spüren können, wie sehr die Europäische Union dazu beiträgt, ihr persönliches Leben zu verbessern.
Das ist eine Aufgabe für die Institutionen der Europäischen Union genauso wie für die Mitgliedsstaaten.
ですから私たちは、どれ程EUが欧州市民個々の生活改善に貢献しているかを欧州市民が感じられるようにしなければなりません。
これが機構としてのEU又はEU加盟国にとっての宿題です。

Zweitens. In einer Welt, die immer weiter zusammenwächst, sind die Herausforderungen zu groß, als dass einzelne Staaten sie für sich allein bewältigen können.
Die Europäische Union ist einer der größten Wirtschaftsräume der Welt.
Sie muss sich als engagierter Partner in der Welt verstehen, der die Globalisierung mitgestaltet und mitgestalten will.
Sie ist eine einzigartige Solidar- und Wertegemeinschaft.
Sie ist unser Garant für Frieden, Wohlstand und Stabilität, und nur gemeinsam werden wir unsere Werte von Freiheit, Demokratie und Rechtsstaatlichkeit und unsere Interessen ‑ wirtschaftliche, soziale, ökologische, außen- und sicherheitspolitische ‑ im globalen Wettbewerb auch weiter behaupten können.
2つ目、常に成長している世界では、生まれる課題は一つの国家で対処するには大きすぎるということ。
EUは世界で最大級の経済圏です。
EUは世界における経済の意欲あるパートナーとして、グローバリズムが形作られることを理解しています。
EUは偉大なる結束を持ち、価値のある組織です。
ですから、EUは(組織として)私たちの平和・幸せ・安定を保障し、自由・民主主義・法治の価値や、世界的な競争の中での経済・社会・内外安全保障の観点からの利益が確保されるのです。

Drittens. Wir müssen unsere Schlussfolgerungen aus dem Referendum in Großbritannien mit historischem Bewusstsein ziehen.
Auch wenn es für uns kaum noch vorstellbar ist, so sollten wir nie vergessen ‑ gerade auch in diesen Stunden nicht ‑, dass die Idee der europäischen Einigung eine Friedensidee war.
Nach Jahrhunderten furchtbarsten Blutvergießens fanden die Gründer der europäischen Einigung den Weg zu Versöhnung und Frieden, manifestiert in den Römischen Verträgen vor fast 60 Jahren.
3つ目、私たちは歴史的意識を持って、今回の投票結果から結論を引き出さなければならない。
どんなに今回の投票結果が理解できないとしても、欧州統合という考えは平和の考えであることを私たちは決して忘れてはなりません。
何百年にも渡って続いた恐ろしい血の流し合いの後、欧州統合の発案者たちは接近・平和への道を見つけ、ほぼ60年前に(EEC、欧州経済共同体を設立するための)ローマ条約が結ばれたのです。

Unser Ziel sollte sein, die zukünftigen Beziehungen Großbritanniens zur Europäischen Union eng und partnerschaftlich zu gestalten.
Ein besonderes Augenmerk wird die Bundesregierung dabei auf die Interessen der deutschen Bürgerinnen und Bürger und der deutschen Wirtschaft legen.
私たちのゴールは、将来のイギリスとEUの関係を緊密かつ双方に利益あるものに形作ることです。
それに向けてドイツ政府はドイツ国民と経済の関心事項に注意を払って参ります。

Die Europäische Union ist stark genug, um die richtigen Antworten auf den heutigen Tag zu geben.
Dafür setze ich mich gemeinsam mit der ganzen Bundesregierung ein.
EUは投票結果に対する正しい答えを出せる強い組織です。
その正しい答えを出すために、私はドイツ政府全職員と共に全力を尽くして参ります。


EUの中でも好調な経済を維持していて、2016年3月に合意がなされたEU・トルコ間難民協議に基づいた難民の受け入れも積極的に行っているドイツ政府、更には旧東ドイツ出身であるメルケル首相個人としても、今回の投票結果を冷静に判断し、なるべく混乱が起きないようにしたいという気持ちが表れていますように思います。


◎ドイツ社会民主党党首の発言


メルケル首相が党首のキリスト教民主同盟(CDU, Christrisch Demokratische Union Deutschlands)と所謂「大連立」を組んでいるドイツ社会民主党(SPD, Sozialdemokratische Partei Deutschlands)党首兼副首相のジグマール・ガブリエル氏(Sigmar Gabriel)は、中道左派政党の党首らしい、労働政策についての発言を、以下ニュースから見てみます。


2016年6月24日放送ARDニュース「ターゲスシャウ(Tagesschau、今日一日のニュース)」(ドイツ語)


Durch Sparen alleine entsteht für die junge Generation Europas keine Arbeit.
Ich erwarte, dass das Konzequenz des heutigen Tages auch in der Bundesregierung noch einmal neu debattiert wird, wie unsere Investitionen in die Zukunft Europas gemeinsam mit andere europäischen Staaten die Lage für die Menschen verbessern kann.
人件費削減で若者の多くが失業しています。
私たちの将来の欧州に対する投資はどれほど彼らの就職状況改善に繋がっているのか、政権内で再び議論されることを望みます。


◎ドイツ公共放送局ロンドン特派員の踏み込んだ分析


ドイツ発の報道の中で特に興味深かったのが、ドイツ公共放送局の一つであるARDのHanni Hüschロンドン特派員の以下の分析でした。


2016年6月24日放送ARDニュース「ターゲステーメン(Tagesthemen、今日一日のテーマ)」(ドイツ語)


Man muss wirklich ganz klar so sagen, die 18 bis 24 Jährige haben zu 75% für den Verblieb gestimmt.
Es sind die Alten, die für die Jungen entschieden haben, und die Jugend müssen seine Zukunft gestalten, die sie gar nicht haben wollte.
Der klassische "Brexitier" ist also ehre älter, nicht so gut ausgebildet, nicht aus London, und er sieht seine traditionellen Bindungen.
明白に言えるのは、18歳~24歳の層が「EU残留」に投票したということです。
高齢者層は若者のために投票したわけですが、その若者は自身が描きたくなかった将来を設計しなければいけないことになります。
EU離脱支持者の多くは、比較的年を取っている、高学歴でない、ロンドン出身ではない、そして伝統的価値を重んじる、という傾向があります。


確かに若者・ロンドン市民・高学歴の多くが「EU残留」を支持していて、その反対が「EU離脱」に投票した、というデータはBBCニュース国民投票特集ページ(英語)にも載ってはいますが、直接的に離脱支持者の多くを「高学歴でない」とか「ロンドン出身でない」とか言及したのを、実際に「EU離脱」に賛成した有権者が聞いたらどんなことになるか、想像しただけでも恐ろしいところですが、公共放送局の特派員であれ自分なりの意見・分析を述べるところが、ドイツ人らしいとも感じます。


◎まとめ


いかがでしたでしょうか。
ARDのロンドン特派員に対してあのような事を言いましたが、僕も高齢者層が、EUを自由に行き来できる等の選択肢の幅の広さ等、若者にとっての明るい未来より、自己の生活改善のみに保身したことに関しては失望を感じています。


2016年6月24日BBCニュース「EU離脱派が勝利した8つの理由」(英語)の中に、EU離脱派勝利の要因として、「EUに寄付している週当たり3億5000万英ポンドの金額を国民保健に回すことができる」という主張を行ったことがあるとありますが、これがどのように渡るのか、渡ったとしても一時金に過ぎず、半永久的な福祉対策が他にあるのか、という議論があるのか疑問です。


半年間に過ぎませんが、ドイツのベルリンに住んだものとして、イギリスから「離婚届」を突き付けられたEUがこれからどの方向に進んでいくのか、これからも注視していきたいと思います。