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2016/03/14

ドイツ3州議会選挙の結果と、それに対する論説について‐ドイツ発ニュースから

こんばんは、タケオです。
3月13日(日)に、ドイツの3つの州で州議会選挙が行われました。
今回は、その結果を伝えるドイツ発ニュースを読んでみたいと思います。
保守系メディアとして知られるフランクフルター・アルゲマイネ紙(Frankfurter Allgemeine Zeitung)の記事です。


2016年3月14日付フランクフルター・アルゲマイネ紙論説 伝統ある政党の敗北(Die Niederlage der Volksparteien)


州議会が行われた州



今回州議会選挙が行われた州は以下の3つです。


○バーデン=ヴュルテンベルク州(Land Baden-Württemberg)
シュヴァルツヴァルト(Schwarzwald、黒い森)が位置し、独有名自動車企業が本社を置くシュツットガルト(Stuttgart)を州都とする。

○ラインラント=プファルツ州(Land Rheinland-Pfalz)
ドイツ公共放送局ZDFが本局を置き、昨今ではサッカーの武藤嘉紀選手が所属するマインツ05(1.Fußball und Sportverein Mainz 05)の本拠地としてもお馴染みのマインツ(Mainz)を州都とする。

○ザクセン=アンハルト州(Land Sachsen-Anhalt)
旧東ドイツに位置し、マグデブルクを州都とする。


選挙結果



ドイツの州議会選挙は、自由ハンザ都市ブレーメン(Freie Hansastadt Bremen)は4年毎、それ以外の連邦州は5年毎に行われ、投票数全体に対する対政党得票率に沿って、政党へ議席が配分される仕組みとなっています。
参考記事によれば、選挙結果は以下の通りでした。

※政党表記
CDU:Christlich-Demokratische Union Deutschlands、ドイツキリスト教民主同盟
SPD:Sozialdemokratische Partei Deutschlands、ドイツ社会民主党
Grüne:緑の党
FDP:Freie Demokratische Partei、自由民主党
Linke:左翼党
AfD:Alternative für Deutschland、ドイツのための選択肢

○バーデン=ヴュルテンベルク州(Land Baden-Württemberg)
投票率70.4%

CDU:27.0%
SPD:12.7%
Grüne:30.3%
FDP:8.3%
Linke:2.9%
AfD:15.1%

緑の党が、前回の第2党から第1党に躍進し、独アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相が党首のドイツキリスト教民主同盟は第1党から転落しました。
前回の選挙では結党されていなかった、ドイツのための選択肢が、連邦議会においてドイツキリスト教民主同盟と所謂「大連立(Große Koalition)」を組むドイツ社会民主党を抜き第3党となりました。

○ラインラント=プファルツ州(Land Rheinland-Pfalz)
投票率61.8%

CDU:31.8%
SPD:36.2%
Grüne:5.3%
FDP:6.2%
Linke:2.8%
AfD:12.6%

「大連立」を組むドイツキリスト教民主同盟・ドイツ社会民主党の第2党・第1党の状況は維持されました。
前回の選挙では結党されていなかった、ドイツのための選択肢が第3党となり、前回第3党だった緑の党が第5党に転落しました。

○ザクセン=アンハルト州(Land Sachsen-Anhalt)
投票率61.1%

CDU:29.8%
SPD:10.6%
Grüne:5.2%
FDP:4.9%
Linke:16.3%
AfD:24.2%

ドイツキリスト教民主同盟の第1党は変わりませんでしたが、前回の選挙では結党されていなかった、ドイツのための選択肢が第2党となり、前回第2党だった左翼党が第3党に転落しました。


選挙結果についての独新聞政治担当記者の論説



以上の選挙結果について、フランクフルター・アルゲマイネ紙のマルクス・ヴェーナー(Markus Wehner)政治担当記者は次のような論説を掲載しています。


Angela Merkel wird nicht zurücktreten nach diesem Wahlsonntag.
Und Sigmar Gabriel wird es auch nicht tun.
Die große Koalition in Berlin wird weiter regieren.
Schließlich waren es ja Landtagswahlen.
Aber eben nicht nur. Abgestimmt wurde auch über die Bundesregierung und deren Flüchtlingspolitik.
アンゲラ・メルケル首相は選挙結果を受けて辞任はせず、ジグマール・ガブリエル(副首相・経済エネルギー大臣・ドイツ社会民主党党首)も現職務からは下りない。
「大連立」は維持されることとなる。
今回は州議会選挙ではあったものの、単なる州議会選挙に留まらず、政府の難民問題対策が争点となった。

CDU und SPD weisen nun auf ihre Erfolge in dem einen oder anderen Land hin.
Das soll das Ausmaß einer Niederlage bemänteln, die an das Selbstbewusstsein geht.
Denn die Verlierer dieser Wahlen sind Schwarz und Rot, die Volksparteien der Bundesrepublik.
ドイツキリスト教民主同盟とドイツ社会民主党は今回の選挙結果を単純に受け入れている。
しかしそれは認識するべき敗北の衝撃をごまかすことに他ならない。
今回の選挙の敗北者は、ドイツの伝統ある政党である赤黒(ドイツ社会民主党の愛称)なのだ。

In diesen fünf Ländern, die mehr als 30 Millionen Einwohner haben, ist die SPD nur noch eine 10-15-Prozent-Partei.
Das hat viele Gründe, Sigmar Gabriel ist es wohl nicht.
Doch Rückenwind aus Berlin hat er seiner Partei auch nicht beschert.
(バーデン=ヴュルテンベルク・ザクセン=アンハルト・バイエルン・チューリンゲン・ザクセンの)5つの州で合計3,000万人が住んでいることになるが、この5つの州で10~15%しか得票率を得ていない。
この結果については、ジグマール・ガブリエル党首を好まない幾つかの要因がある。
しかし彼はベルリンから吹いている辞任要求を突っぱねている。

Der große Wahlsieger freilich ist die AfD.
Sie hat die Skepsis vieler Bürger gegenüber der Flüchtlingspolitik der Bundesregierung für sich nutzen können, hat Protest- und Nichtwähler gewonnen.
今回の選挙の勝者はドイツのための選択肢だ。
多くの国民が難民問題への独政府の対策に疑問を感じていることを利用し、難民受け入れ反対派や無党派層の支持を獲得した。

Es ist wahrscheinlich, dass ihre Erfolge geringer ausfallen werden, wenn die Flüchtlingsfrage an Bedeutung verliert.
Allerdings hat die AfD gezeigt, dass sie andere Protest-Themen aufgreifen kann.
Und das Thema Migration und Integration wird brennend bleiben.
難民問題が争点化しなくなれば、今回の結果の影響は小さくなるだろう。
しかし、ドイツのための選択肢は他に争点となっている問題に対する声を拾い上げることができることを示した。
そして移民・統合のテーマはドイツ政治の火種のままになるだろう。


この政治担当記者は選挙結果について、州議会選挙ではあったものの、ドイツ全土で論争となっている難民問題が第一の争点となったことで、現在メルケル政権に対する批判の声が高まっている中で、「大連立」を組むドイツキリスト教民主同盟・ドイツ社会民主党が敗北し、ドイツのための選択肢が難民受け入れ反対者の心を掴んで得票率を伸ばした、と分析しています。


終わりに:選挙結果についての考え



僕は今回の選挙結果、特にドイツのための選択肢が躍進したことについて、非常に残念に感じています。
ドイツのための選択肢の主張には人道的観点がなく、更には「移民・難民の受け入れ反対」ということのみを強調しているだけで、受け入れを拒否した移民・難民を、他国と強調してどうやって扱うのか、他の先進国に漏れず少子化が進む中、どうやってドイツ経済・社会を維持していくのか、という具体的政策を示せていないように思えるからです。
ドイツも、アメリカほどではないにしろ、トルコからの移民をはじめ、既に多くの移民・難民が住んでいる国であるので、ドイツがこれ以上移民・難民に対して厳しい視線を向けないことを願うばかりです。